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なぜ沖縄
「芸術家か。こんな街にもいるもんだな」
僕のイメージでは田舎の山奥に篭ってるだったから、ちょっと都会のこの街にいるとは思いもしなかった。
いや、でも都会だからあんな格好で歩いても他の人は気にしてないのか。
「今日どんな人だろ……早めに来てもらってもいいか、聞いてみよう」
初めて自分から電話しようかなと考えた僕はトントンと下矢印をタップし、空を笑顔で眺める人を見ながら耳に構える。
すると、鳥のさえずりの音が聞こえたと同時に彼はポケットからスマホを出して、そのまま耳に当てた。
「はいさーい、おいで屋ですよぉ」
話し方はサガに近いものの、声が高い……そして、なぜ沖縄なんだろうか。
「あの、佐藤平太と申しますが」
「あ〜どうもどうも平太さん! いつもお世話になってますぅ」
いや、こっちがお世話になってる……というか、お世話されてますと思って、ちょっと恥ずかしくなる。
「あの、仕事早く終わったので、今から来てもらってもいいですか?」
「はいはい、大丈夫ですよぉ……今、どこにいます?」
その人がキョロキョロしてるのを見て、まさかと思いながら答える。
「野乃商店街の本屋前ですけど……もしかして、今、空見ながら絵を描いてません?」
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