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耳錠

 パン屋に着いたからイヤホンを外そうかと手を離そうとしたのに、より強く握られた。 フェイントをかけながら何度も試してみても、ツクはエッちゃんさんの歌に合わせて鼻歌を歌いながら離してくれない。 「ツク、このままだとお店に失礼だし、パンも取れないから」 ちゃんと言うと、どんぐりの目でチラッと僕を見てふふんと笑った。 「じゃあ手は離してあげるけど、イヤホンはつけたままなぁ……みんなに見せつけてやろうよ」 愛の耳錠!と言って、ツクはパッと手を離して、駆け足でパン屋に入っていくから僕も引っ張られるように追いかけた。  耳錠で繋がりながらそれぞれにパンを選んで会計し、セルフの飲み物とバスケットに入れ替えられたパンを持って、店の外の席に向かう。 「さすがに食べる時は外そうなぁ」 なんて言ってイヤホンを外すから、僕も外してツクに渡した。  向かい合わせに座り、お互い何を買ったかを見てみると、ツクはいちごのパン3つとウサギのキャラクターのパン1つにカルピス、僕はチョコのパン3つにコーヒーだった。 「へいちゃん、チョコだらけだぁね」 「ツクはいちごばっかりじゃん!」 楽しそうに言い合って、笑い合った。

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