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ちょこっとツクとモト
「そういえば、モトもエッちゃんさんの話してたな」
『エッしゃんヤキモチ妬いてたから、あだ名ちゅけてあげてくだしゃい』
なんて舌足らずな感じで言ってたのを思い出す……なんでだろうな。
スタンドに立てかけたスマホで時間を確認したら、『\おいで屋/』からメッセージが来ていた。
‘‘関くん、駄々こねてる……けど、絶対連れてく’’
こっちから連絡するのはアリやんなっていうよくわからない理屈で関くんのことを実況してくれてるサガ。
ムネ肉ミンチにさきいかとホタテの耳をハサミで切り入れながら、音声入力で‘‘無理しなくていいよ’’と打って送る。
「ささみもそろそろいいかな」
蓋を開けると、茹でていたささみが白よりの薄ピンクに色づいていたので、火を止めて余熱で蒸す。
ピロリンと続けて2回程鳴ったからスマホを見れば、サガとは口調が違う文章が綴られていた。
‘‘はずかしいだけだから、だいじょおぶぅ^_^’’
これはたぶんツク。
‘‘平太しゃんはいい人だってみんにゃで言ってるんでしゅけど、『そんなええ人なんておらん』ってひねくれてましゅ’’
モト……書き言葉も舌足らずなんだな。
「関くんって関西弁なんだ……駄々こねたりひねくれてたり、面白い人だな」
自分を汚されたくないから、他人と関わるのが苦手……傷つくのも傷つけるのもイヤ。
そんな思いが関くんから感じて、僕と似てるなって思う。
「たくさん傷ついたからこそ、なんだろうな」
まだ顔も声も知らない相手を思いながら、ささみ5本を中皿に置き、代わりにつみれとカット野菜を入れて、再び火をつけた。
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