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‘‘友達’’

 「あーぶくたった、にえたった。にえたかどうだか、たべてみよー」 ‘‘今から行くにゃら’’ たぶん関くんからのが来たから、アクを取り、溶き卵を入れてかき混ぜる。 「関くんのあだ名何しようかな」 きっとイケメンなんだろうなとか抱くのか抱かれるのかとか今から来る‘‘友達’’を待ちわびる。 「無理はさせないように、が1番だけどね」 なんの特徴もない僕を癒してくれるなんて……奇跡なんだから。 なんて暗いことを考えてるうちに薄い黄色の巾が舞い上がったのが見えて、火を止めた。 「むしゃむしゃむしゃ」 つけたようにまた歌を歌い出して、お椀に注いだ汁を飲んでみると、鶏と野菜の出汁の優しい味がする。 「もうにえたな」 簡素だけど、悪くない味に久しぶりにしては良く出来たなとひとまず安心した。  ポリ手袋をかけた手でネギとごま油の中にささみを入れ終わってすぐに、ピンポーンとチャイムが鳴った。 「グットタイミングだな」 そうつぶやいて、はーいと叫びながら玄関に走っていく。 玄関のドアをゆっくり開けると、僕より背の高い男性がスッと立っていた。 目まで覆うくらいの長い前髪が黒いのと対照的に白い肌、女性のようなふっくらと厚い唇に目を奪われる。 綺麗だと……純粋に思った。  「関本(せきもと)と申します。お世話ににゃります」 鼻声でそう言い、90度のお辞儀をした彼を見て、あだ名は決まった。 気に入ってくれるといいなと思って、彼の前髪にキスをした。 「な、に……?」 その声でやっと離れると、前髪の間から見えた目が揺れていた。 「おかえり、キヨ。ご飯出来たから来てよ」 僕は穏やかに笑い、キヨの手を取る。 「キヨ……?」 「清彦だからキヨ……さっ、靴脱いで」 おずおずと靴を脱いだキヨの手を引っ張って、僕は部屋へと連れていく。

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