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なんで
後片付けを済ませ、ぐしゃぐしゃになった顔をティッシュで拭き、鼻をかむ。
「あれっ、荷物忘れてる」
卓上テーブルの向こうを何気なく見たら、袋は黄色、取っ手は藍色の紙袋が静かに佇んでいた。
すぐに帰れるように持ってってあげようと優しく持ち上げて前を見ると、キヨがそこに立っていた。
かき上げられた濡羽のような髪に艶のある瞳、黄色のシャツのボタンが3個外れて藍色の生地がチラリと見える姿に、お湯熱かったかなと思う僕。
「荷物忘れてたよ……最後に水1杯飲んでって」
僕はなんとか笑みを浮かべて紙袋を右手に握らせると、シンクに向かうために背を向けた。
その瞬間、左手を掴まれて、抱き寄せられる。
「なんでやのん……」
納得いかない時の子どものような声が頭の上から聞こえてくる。
なんて思ってるうちに押し倒されてた僕は何が起こってるのか全然わからない。
「キヨ、これ……「なんなん?」」
なぜかキレてる声が聞こえて、恐る恐るキヨの方へ身体ごと向けると、初めてしっかりと見つめ合う。
「僕、なにかしたならごめんね」
また泣きそうになったから目を逸らすと、キヨはため息を吐いた。
「自分、むちゃくちゃやわ」
やっぱり嫌われてんのかなと、喉がツーンとしてきたから大きく唾液を飲み込む。
すると、右あごを長い指で上げられた後、厚い唇が僕の呼吸を止めたんだ。
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