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6日目
「目まぐるしいやろ、坊主」
アフターケアで電話をくれたエッちゃんさんの声に今日は土曜日かと思うけど、なんだかいつもより気持ちが軽い。
土曜日は学校が休みだけど、バイト先のコンビニは忙しいんだ。
「でも、みんなの優しさでやっていけてるし、癒されるのに忙しいって感じかな」
僕は穏やかに言うと、それは良かったわと深みのある声で言ってくれるエッちゃんさん。
「極度の人見知りのセキも警戒心の強い柄谷もものにするなんて……やるなぁ、坊主」
褒めてくれてるのかはわからないけど、嬉しくて明るい声を出して笑う僕。
「で? 俺のあだ名はどうなった?」
忘れてたんちゃうやろなとヤンキーみたいな凄んだ声をエッちゃんは出し始めた。
「エツ……恵みの津で恵津はどう?」
エッちゃんからとっさに考えたのを言うと、エツ……南恵津 かと言ったから、苗字を知らなかったことに気づいた。
「ええやないか……感謝や、坊主」
優しく言ってくれたのを聞いて、ホッと息を吐いた。
「今日は根切さんだよね? 遅くなるかもしれないってちゃんと伝えてよ?」
なんか昨日の電話を聞いてたら、ちょっと圧が凄い人だったから念には念を押す。
「たぶん言うても意味ないと思うわ」
なんて力なく言ってため息を吐くエツ。
「怒られるかな……なるべく時間通りには帰れるように頑張るけど「いや、そういうことやないねん」」
言い訳を遮るようにエツはそう言い出したから、どうしたの?と聞いてみる。
「坊主は……中臣グループって知ってるか?」
「中臣って中臣鎌足でしょ? 大化改新の」
僕は単純に言ったら、やっぱそうやんなと呆れたように言うエツ。
「あれ、承久の乱だっけ?」
間違ってるのかと思って言ったら、合ってるけどちゃうとエツは笑い出した。
「知らん方がええかもな……まぁ、大丈夫や」
エツは適当に言うけど、いい声で本当に力になる。
今日はバイトだけだから黒のボディバックに荷物を入れ、肩に掛けて立ち上がる。
「じゃあ行ってくるよ、エツ」
力強く僕が言うと、おお、行ってきぃと優しく言ってくれて電話が切れた。
「楽しみはバイトの後でっと」
大きい声で言った後、笑顔で部屋を後にした。
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