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俺らしか知らない

すごい速さで帰り支度を済ませた3人が来てから、僕はカギを閉めた。 駐車場までの短い距離なのに、誰が手を繋いでいくかで気合いの入ったじゃんけんをする5人。 結果は手の甲を向けて出したサガに決まり、小指を絡めてサガの心地良い鼻歌を聴きながら歩いていく。 「なんか変な感じするね」 「なにぃ、イヤ?」 「ううん、くすぐったいだけ」 「それは……幸せな証拠やで」 サガは耳元に顔を寄せたのか、生温かい息が首にかかる。 「俺らしか知らない、平太やから」 マシュマロに熱いチョコレートが絡みつくような甘い囁きに震え、ちょっと噛まれた耳が本当に熱かった。 「お〜そ〜い〜!!」 黒いリムジンに先に乗ったツクが頬を膨らませて怒っていた。 「ほんまや、バイトしたるぞ」 「……待ちくたびれたわ、あほんだら」 眉間に皺を寄せたマニとエツも耳付きの帽子を被っていた。 エツはキヨと同じものに黒いファーが追加されていて、マニは茶色いファーが満遍なく刺さっていた。 「マニのやつは……ライオン?」 何気なく言うと、ピンポンと高い声で言って立ち上がるツク。 「ようわかったな……まぁ、座り」 優しくそう言って叩いた場所は……エツの股の間。 オロオロとして躊躇っていると、2種類の大丈夫が聞こえてきた。 「エッちゃん、ほんまはいるはずなかったんやから」 おいでと手招きするサガ。 「俺が見つけてきた宝や、俺が守るわ」 口角を上げて、両手を広げるエツ。 これは……行くしかないよね。 僕は意を決して、エツの前に座る。 「では、あそこまでよろしゅうお願いいたします!」 マニの声に続いて、みんなでお願いしますと叫ぶと、リムジンは動き出した。

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