68 / 74
俺らしか知らない
すごい速さで帰り支度を済ませた3人が来てから、僕はカギを閉めた。
駐車場までの短い距離なのに、誰が手を繋いでいくかで気合いの入ったじゃんけんをする5人。
結果は手の甲を向けて出したサガに決まり、小指を絡めてサガの心地良い鼻歌を聴きながら歩いていく。
「なんか変な感じするね」
「なにぃ、イヤ?」
「ううん、くすぐったいだけ」
「それは……幸せな証拠やで」
サガは耳元に顔を寄せたのか、生温かい息が首にかかる。
「俺らしか知らない、平太やから」
マシュマロに熱いチョコレートが絡みつくような甘い囁きに震え、ちょっと噛まれた耳が本当に熱かった。
「お〜そ〜い〜!!」
黒いリムジンに先に乗ったツクが頬を膨らませて怒っていた。
「ほんまや、バイトしたるぞ」
「……待ちくたびれたわ、あほんだら」
眉間に皺を寄せたマニとエツも耳付きの帽子を被っていた。
エツはキヨと同じものに黒いファーが追加されていて、マニは茶色いファーが満遍なく刺さっていた。
「マニのやつは……ライオン?」
何気なく言うと、ピンポンと高い声で言って立ち上がるツク。
「ようわかったな……まぁ、座り」
優しくそう言って叩いた場所は……エツの股の間。
オロオロとして躊躇っていると、2種類の大丈夫が聞こえてきた。
「エッちゃん、ほんまはいるはずなかったんやから」
おいでと手招きするサガ。
「俺が見つけてきた宝や、俺が守るわ」
口角を上げて、両手を広げるエツ。
これは……行くしかないよね。
僕は意を決して、エツの前に座る。
「では、あそこまでよろしゅうお願いいたします!」
マニの声に続いて、みんなでお願いしますと叫ぶと、リムジンは動き出した。
ともだちにシェアしよう!