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火焔・ソル1
皆黒が、次にしなければならないのは《火》を生み出すことだった。
春先の雪解け期とはいえ、気温はまだ氷点下に近い。
特に この森は夏が短く、とてつもなく冬が長い。
《極寒の森シュヴァイケルン》では、
火がなくては人間の命など一日ももたないだろう。
彼は、ちらりと窓の外を見た。
(…あの河の水かさが増すのに、どのくらいかかるかな)
雪解け水が河に溢れる日数を計算しつつ、暖炉の前に立って呪文を唱えた。
「砂塵は薪に、薪枝は火種に、湿水は空流に、炎聖、いざ給え、招かれよ」
静かに呟くと、すぐさま火炎の精霊が現れた。
狭い暖炉の中で、
炎は次第に大きくなり、
室内を明るく照らし始めると同時に、あたりには暖かな熱が充満した。
「――ずいぶんと寒いところだ」
現れた早々、文句をいう火霊に、皆黒が苦笑した。
「短い間だが、よろしく頼むよ。…火焔の子・ソル」
名前を呼ばれて、ソルがこくりと頷いた。
「短い間、ね。この場所に、そんなに長居するつもりはないってことか」
「うん、まぁ…そういうことかな」
「ふーん?」
「別にどうだっていいだろう」
皆黒の瞳に、暗い影が落ちるのを見て、
ソルは不思議そうに首を傾げた。
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