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洪水5

皆黒が戻ったとたん、 ソルは噛みつくような形相で、彼を質問攻めにした。 「皆黒! さっきのアレはなんだ?! 陽王を連れてきた青いのは何! 昨日まではあんなのいなかったのに! どこから来たんだ?!」 はぁぁ、と息をつき、皆黒は面倒臭そうにソルを振り返った。 その瞳が神妙な光を放ったのを見て、ソルは息を飲んだ。 「あれはマールだ。たぶん水の子じゃないかな。お前と同じ、妖精とか精霊とか、多分そのたぐいだ」 「…マール」 ソルは、噛みしめるように小さく呟いた。 「マールか。…また来るかな」 「ここに住みついてるなら、そのうち会えるだろ。お前だって火がある場所ならどこにでも現れるだろう。水も同じだ。…でも――、」 皆黒は、じろりとソルを睨みつけた。 「好奇心旺盛なのは構わないが、ヤツには絶対に近づくな! 自分が火の精霊なのを忘れたわけじゃないだろうな、ソル! 油断すると消されるぞ!」 「わ、分かってるよ、」 厳しく叱責され、ソルは珍しく暖炉に引きこもって無言になった。

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