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水精霊マール3
(なにやってんだ…?)
そう思った束の間、お互いの視線がバチッと重なり合い、驚いて言葉を失った。
「わ、…ぁ…っ」
ソルと同様、こちらに気づいたマールが、慌てふためいて声を上げる。
そしてパニックになりながら水面をバシャバシャと叩くと、
素早く反転して水の中へと逃げてしまった。
「おい…ウソだろ…」
茫然としたソルだけが、ひとり河辺に取り残される。
静かになった水面を見つめたまま、ソルはショックで動けなくなった。
けれど、
ひとつ、分かったことがある。
――なるほど、
マールは、花が好きだ。
水中や川べりに咲く花の種類は知れてるから、
もしかしたらマールは、庭に咲く花を見たことがないのかもしれない…。
(皆黒の庭も、たまには役に立つんだな)
そう思うと、なんだかおかしくなる。
気づくと、空を旋回していた小鳥は、
いつの間にか姿が見えなくなっていた。
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