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水精霊マール4
「お前、なんだか楽しそうだな」
皆黒に指摘されて、ソルは、
「んー、そうかな」
とすっとぼけた。
いぶかしんだ皆黒が、探るような視線を投げかけてくる。
「お前を家の中で見かける日が少ない気がする。最近はずっと出かけてばかりいるだろう?」
「オレがいなくても暖炉の火はちゃんと燃えてるんだから、別にいいだろ」
「そういう問題じゃない。なにか楽しい遊びでも見つけたのか」
「や、別に」
皆黒の質問をかわして、背を向けた。
目を合わすと、なにかを勘ぐられそうでドキドキする。
その心情をごまそうと、ソルは深く息を吸った。
「ところで皆黒。…花を、…もらっていいか。…に、庭の…」
うまく話をそらすつもりが、声がかすれて言葉にならない。
「――いいけど」
抑揚なく答えた皆黒に見つめられて、ますます心地が悪い。
「花ごときで嬉しそうだな、ソル。…隠してるつもりだろうが耳まで真っ赤だぞ、気持ちが悪い」
「う、るっ、…さい!」
声を震わせて、ソルは逃げるように外に飛び出して行った。
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