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恋火2
(くそっ。…今日はもうムリかな。また明日出直そうかな)
怖がらせてしまったかも…
そう考えると、後悔ばかりが先立つ。
もう少し穏やかに話が出来れば、とも思うけど――これがなかなか難しい。
(オレが泳げたら良かったんだけどなぁ)
などと名残惜しそうに川辺にへたり込んでいると、
その時、
再び水面で飛沫が上がった。
大きな波紋を広げた青い影が、水中を滑るようにこちらへと近づいてくる。
息を飲んだソルがじっと見守っていると、
マールは珍しく、ソルのいる川岸へとすすっと近寄ってきた。
「え、」
目から上だけを水面から出し、警戒心まるだしで見つめてくる。
そのまんまるな瞳に透き通るような空の色が映り込み、ぼんやりと見とれていると、
「――あげます」
そう言って、マールは岸の上に小さな石を置いた。
「オレに?」
返事の代わりにこくこくと頷いたマールに気を良くして、石を取ろうとすると、
「あっ、まだ濡れてるから」
と、注意された。
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