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恋火3
「や、大丈夫」
まだ水滴の残る石をつまむと、指先がチリッと痺れた。
その痛みが、瞬く間に体中の全神経に浸透していく。
水に触れたせい、だけじゃない――
こわごわと話しかけてくるマールの臆病さが愛しくて、
溢れてきた痺れるような痛みが胸の中にまで深く入り込む。
心臓が焼け焦げるほどの熱を感じた。
「すごい、キレイだな」
「…お花のお礼です」
――ソルは、水の中の風景を知らない。
河に投げた花が、水泡に包まれながら、どんな風に花弁を散らし、底に沈んでいくのか想像もできない。
けれど、
沈み落ちた先の水底では、
たくさんの石が美しくキラキラ輝きながら、花影を迎え入れているのかもしれない。
「…大事にする」
「喜んでもらえて良かったです」
ほっとした顔で笑うマールの表情が、今日は特別に可愛かった。
そんな2人の様子を、虹色の小鳥が見守るように飛び回っている。
ソルはふと空を見上げた。
「あの鳥は、お前の鳥か?」
ソルに尋ねられて、マールは、
「ルイードの」
と、答えた。
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