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月とマールのひととき

【マール】 川面に鋭く突き出た岩端に、消え入りそうな焚火の跡がひとつ。 くゆる煙にまぎれて、 残り火はまるで小さなその命を繋ぐように、 ひっそりと、ささやかに揺らめいている。 そこに貴方の姿はないけれど。 月光は銀の矢のように、 切なく、見えない貴方を包み込んでいる。

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