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くちづけ1

ある朝。 キッチンから甘い匂いが漂ってきて、 目を覚ましたソルは、ふわりと暖炉から飛び出して、皆黒の元へと向かった。 テーブルの上には、見慣れない豪華な料理が乗っている。 ソルは目を見張った。 「…これはなんだ?!」 「ケーキだよ」 テーブルに身を乗り出したソルに苦笑し、皆黒が即答した。 「つかおい、テーブルに近づきすぎるな。クロスが燃える!」 「…、ケーキ、…」 色とりどりのカラフルなケーキを前にして、 ソルは、すっかり見入ってしまった。 皆黒は、いつもは庭の畑で作った粗末な野菜しか食べないのに。 しかもその畑ですら、魔法で作った代物で。 冬でも雨期でも、関係なく実る野菜を食べるのが、毎日の習慣だというのに。 (――珍しいこともあるものだな) と思っていると、皆黒が珍しく幸せそうな笑みをこぼした。 「実は今日、恋人の誕生日なんだ。特別な日だ」 「…アンタにもそんな相手がいたのか」 「もういないけど」 「へ?」 ソルは首を傾げた。

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