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くちづけ3
河に向かったソルは、いつものように水面に花を投げ入れた。
ひとつ、ふたつ…
水にたゆたいながら静かに流れていく様子を見守っていると、
まもなくして水音が響き、マールが顔を覗かせた。
ソルが投げた花を握りしめて、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
その顔を見たとたん、
『お前はあの水精霊が好きだろう』
皆黒に言われたことを思い出して、かあっと頬が熱くなった。
ソルを見つけたマールが、嬉しそうに川岸に滑り寄って来る。
「お待たせし…」
「別に待ってないっ!」
思わず声を張り上げてしまうと、とたんに空色の瞳が潤んだ。
落胆した色が浮かび、泣きそうになったマールが表情を曇らせる。
「あ、…や、違っ――。ち、ちょっとは、待っ、てた、…かも」
言い訳がましい物言いに、自己嫌悪に陥ってしまう。
――待ち合わせをしてるわけじゃないんだから、会えない日があっても当然だけど。
それでもこうやって来てくれるマールを見ると、当たり前のように心が緩む。
「ああああ、っ」
ソルは、ぐしゃりと頭をかきむしった。
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