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くちづけ4

「えっと、こないだは悪かったな。皆黒が怯えさせて。悪気はないんだ。アイツ、本当は、すごくいいヤツで…」 「…うん、」 「おわびに、」 と、ソルは皆黒が作ったケーキを差し出した。 驚いたマールが大きな目をさらに開いて、それをじっと凝視してくる。 「これは、人間の食べ物じゃないのかな」 「誕生日に食べるものらしい。皆黒が言ってた」 「…食べたことないけど」 「オレも」 2人は互いに顔を見合わせて、笑ってしまった。 「じゃあ、せっかくだから」 と、マールが指先でクリームをすくって口に入れた。 「なんだか変な感じ。味もよく分からないけど、悪くないと思う」 「そりゃ良かった」 ソルはほっと胸を撫で下ろした。 「こないだ怖がらせてしまったから、もう来ないのかと心配した。…マールが、元気になればと思って」 「――」 ソルの言葉を聞きながら、彼は立て続けにぱくぱくとケーキをつまんで口の中に放り込んだ。 特別おいしいとも思えないけど、食べられないこともない。 ケーキの中には森で採れる果実に似た果物が入っていて、マールはそれを口の中でゆっくりと味わった。 「…皆黒ってどんな人なの?」 マールが遠慮がちに尋ねると、 ソルは返答に困って悩んでしまった。

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