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とある夏の日1
ある日の朝。
いつものように川岸に向かったはずのソルが、
珍しく大慌てで屋敷へと駆け戻ってきた。
「皆黒!大変だ!とんでもないことになった!」
大声を張り上げて名前を呼ぶ。
と、寝室の掃除をしていた皆黒がなにごとかと振り返った。
「ソル? なにを騒いでるんだ?」
「河がっ! 無い!!」
「――は?」
きょとんと目を丸くした皆黒が、みるみるうちに眉間に皺を寄せた。
「なにをバカなことを言ってる。いよいよ頭がおかしくなったのか」
「違うっ!ホントにないんだ。河が!すっからかんになってる!」
「…」
どうしようどうしよう、と室内を歩き回るソルに呆れ、
皆黒はやれやれと肩をすくめた。
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