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とある夏の日3

数日ほど待ってみたものの、河の水は一向に戻る気配はなく、 ソルは、不安な日々を過ごすハメになった。 マールの気配を探るようにして、かつて河だった場所の上を何度も何度も飛び回る。 けれど愛しい水精霊の姿は、まったく戻ってこない。 「…あの鳥も、姿が見えないな。…もしかしてマールと一緒にいるのかな」 浮き火となった小さな炎が、辺りをふわふわと徘徊する。 その光景に、森の動物たちがざわめき始めているのに気づき、ソルは慌てて屋敷へと駆け戻った。 そして、陽王がいる馬小屋に飛び込むと、小ぶりのバケツを引っ張り出した。 いつも陽王が水飲み用に使っているバケツだ。 「ちょっと借りるぞ、陽王」 皆黒の愛馬に声を掛け、再び河だった場所に戻ってきたソルは、 バケツを片手に、河の上流に向かって歩き出した。

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