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とある夏の日5
その時。
パシャッとかすかに水音が響いたかと思うと、わずかに残った河水の中からマールが姿を現した。
「マール!」
「…、ソル、」
火精霊の顔を見たとたん、緊張がほぐれたらしい彼がボロボロと泣き出した。
「夜中に、山崩れで、地割れが起きて、…それで、水が全部流れ出して、…っ、ううっ」
「分かった分かった。今、助けてやるから!」
ソルは岸辺から身を乗り出すと、持ってきたバケツを河の中に突っ込んだ。
「さぁ、この中に入れ!」
…これでマールを助けられる…!
――そう思った一瞬。
ふいに山から強風が降り下りてきた。
その風は、
いきなりソルの体に体当たりしたかと思うと、
マールの目の前で、
まるで幻想か何かのように、
ソルの体を容赦なく吹き飛ばしてしまったのだ。
「…っ、ソル!? うそ…っ、うそでしょう?! どうしよう、…ソル!ソル!」
その呼び声が、いつまでも河の上流に響き渡っていた――
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