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とある夏の日7
グラグラと揺れるバケツの中で。
マールが不安げに顔を上げたのは、そんな時だ。
「あの、皆黒。…さっきから川から離れた場所ばかり歩いているね」
「文句があるなら山の中に捨ててくぞ」
とたんにマールが、恐怖でひゅっと喉を鳴らした。
「み、みみ、水が、…キライなのに…。それなのに、皆黒は、河の近くに住んでいるでしょう?」
皆黒が、じろりと睨みつけてきた。
「ソルからなにか聞いたのか?」
「…まぁ、少し」
「なるほど」
それっきり、皆黒は無言になった。
――どうやら怒らせてしまったらしい。
やっぱり聞いてはいけない質問だった、と後悔しつつも、
このままだと本当に山中に捨てられそうな気がして、
マールは会話を繋げようと必死になった。
しばらくすると、
近づいてきた虹色の鳥が、2人の上を輪を描くように旋回し始めた。
それに気づいた皆黒が、おかしそうに目を細める。
「お前を探していたのはソルだけじゃなかったらしいな」
その声が、いつもより優しい。
「あの鳥も、お前のことを心配して迎えに来たんだろう? ご苦労なことだ」
「…あ、あの鳥には、名前がないんだ」
「それが?」
怜悧な眼差しを注がれて、マールはひくりと頬を引きつらせた。
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