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とある夏の日8
「ソルが、皆黒に名前をつけてもらえって。きっと良い名をくれるからって」
「…――」
皆黒は、鬱陶しそうに眉間に皺を寄せた。
名付けなんて面倒くさいと思っているのが、手に取るように分かる。
うまく会話ができなくてマールが自己嫌悪に陥っていると、
「着いたぞ」
そう呟いた皆黒が、足元にどさりとバケツを置いた。
――目の前には、青い屋根の家。
小さな庭と、馬小屋。
…そして、その道の前には、干上がってしまった河が広がっている。
ほんの少し離れていただけなのに、ものすごく懐かしい気がして、
思わずマールの表情に笑みが戻った。
そんな彼をよそに、
皆黒は魔法を使って、河に水を呼び戻した。
――といっても、ほんの少しだけ。
自然の摂理を覆さないよう、
水精霊のマールが、かろうじて生きていけるだけの水量を河へと戻した。
そして、
文句は言うな、という目つきで、持ち上げたバケツをひっくり返すと、
皆黒はマールを河の中へと放り込んだ。
それこそ水を得た魚のように、
一度深く沈んだマールが、しばらくして嬉しそうに水面に顔を出して、
皆黒の方へと笑顔を見せた。
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