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ソルの言い訳6
「出てこないなら、オレがそっちに行くからな!」
「えっ、」
ソルの言葉に驚き、
(まさか水に飛び込む気じゃ…!)
と動揺して、岩陰から顔を出そうとした刹那。
ソルは大きく飛び上がったかと思うと、見事岩上に着地して、水面を覗き込んだ。
「――見つけた」
「…っ」
身を乗り出したソルの鼻先がすぐ近くまで寄り、視線が重なり合う。
自分が拗ねた子供みたいな気がして、
それを見つかってしまった心地悪さまで感じて、
マールはかぁっと頬を染めた。
「…ソルは、イジワルだ! 僕をだましたの?! なんで脅すみたいなことするの!」
「そっちが勝手に勘違いしたんだろ。もっとも、姿を見せなきゃ、本気で河に飛び込む気でいたけど」
「サイアク!」
いつの間にか立場が逆転してる。
からかうように注がれる緋色の瞳に窮して、マールはブクブクと水の中に沈んだ。
そして目から上だけを水面に出すと、責めるような眼差しをソルに向けた。
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