45 / 57

ソルの言い訳7

「…僕のこと、キライになったんじゃないの…?」 「ん?」 「僕が迷惑をかけたから、怒ったんでしょう?」 「や、…いや、…――うーん、」 マールに問われて、彼は困ったように視線を泳がせた。 「…なんか、恥ずかしくて。カッコつけて探しに行ったくせに、結局助けてやれなくて。ちょっと顔が見せられなかった、というか…」 「怒ってない?」 「もともと怒ってない」 「本当に?」 「――もっと近くに来て」 不安そうなマールに目を細め、ソルは彼を手招いた。 「オレは、これ以上水に近づけないから。もっと近くでよく顔を見たい」 そう言われて、マールはぎこちなく水面に身を乗り出した。 前のめりになったソルが、ギリギリのところまで顔を近づけてくる。 そっと、お互いの唇が触れ合った瞬間、 凍てつくような痛みが走った。 それでも心の中はほわりと温かくて、 「まぁとにかく無事で良かった」 ソルが呟くと、 顔を見合わせて、照れくさそうに笑ってしまった。 「…ソルは、いつまでここにいる?」 「え?」 「君は、人間の《所有物》だから、いつか皆黒と一緒にここからいなくなる、ってルイードが」 「――」 「森に火は必要ない…危険すぎるって、…ルイードが…」 その言葉は、ソルにはかなりの衝撃だった。 ――だって、 いつかいなくなるのは、マールの方だと思っていたから。 彼は水のある場所ならどこにでも行き来できる自由人だから… できれば長くこの森に留まってくれればいいと、ひそかに願っていたのに―― …自分自身が、いつか、この森を去る日がくるなんて、想像もしていなかった。

ともだちにシェアしよう!