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巨木の精霊ルイード1

――シュヴァイケルンの森は、夏が短い。 新緑の季節があっという間に過ぎてしまうと、気温は急速に下がっていく。 暖炉の前でコートの手入れをしている皆黒を見ながら、 ソルは暖かな炎をくゆらせた。 「あのさ。皆黒は、いつまでこの森にいるんだ?」 「急になんだ?」 こちらを見ようともせず、皆黒は縫い針を動かした。 「そのうち出ていくのか? 人間がたくさん住む町に移り住むのか? それとも…」 ソルは、ぐっと口をつぐんだ。 ――もともと皆黒は、死ぬためにここにやって来た。 水害で死んだ恋人と同じ末路を辿ろうと、 自分も洪水で流れて逝くのを今でも望んでいるのなら、 次の雨期を待っているかもしれない。 きょとんと眼を開いた皆黒が、ソルを見つめた。 「驚いたな。なんで今そんな話を?」 「だって、ルイードが」 「…ルイード?」 皆黒は、繕い物の手を止めて顔を上げた。 暖炉の中でしゃがみ込んだソルが、言いにくそうに下を向く。

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