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巨木の精霊ルイード3
「…皆黒?」
「いや、この森に住む奇特なヤツはオレ達ぐらいかと思っていたのに。いろんな《モノ》がいるんだな、と思ってさ。――そんなに古参な精霊なら、一度挨拶に伺わなきゃダメかな」
「ムリじゃないかな。ルイードは人間がキライだってさ。…あと、オレのことも…」
「そうか。なら仕方ないな」
「…」
いつだったか、マールが言っていた。
《ルイードは人間がキライなんだ。…それに、ソルのことも…信用するなと言っていた》
マールの友達なら、仲良くしたいとは思うけど、
嫌われているのなら、どうしようもない――
「ところで皆黒、質問の答えは? この森にはいつまでいる?」
不安げな形相で尋ねると、その質問を一蹴するように皆黒が鼻で笑った。
「そんなことよりソル、あれほど水精霊には近づくなと言ったのに、相変わらず約束を破っているな?」
「うっ。話をはぐらかすなよ!質問に答えろ!」
「オレがどこにいつまで住もうが、お前には関係ない。…それより、もう川には近づくな。庭の中だけにしろ。守らないとまた外出禁止にするぞ」
「…っ」
ソルが、むっと唇を尖らせた。
外出禁止、というフレーズがよほどネックになっているらしい。
もっとも皆黒にしてみれば、ソルが約束を守るとは、とうてい信じていない。
どうせこの単細胞のことだから、すぐに約束を破って河に行くに決まっている。
会うなと言われれば、会いたくなる。
行くなと言われれば、行きたくなる。
ソルの中で、マールの存在が次第に大きくなっていることを、
皆黒が気づかないはずがなかった――
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