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皆黒とルイード3

「…おっと?!」 バランスを保とうと、もう一方の足で踏ん張る。 だが、それすらも泥土に飲み込まれて、ずるずると一気に崖に向かって滑落した。 「うっわぁ! 落ちる!」 ――思ったより高い。 このままだと一番下まで落下して、下手したら転落死。 もし運が良くても、骨折か全身打撲…というサイアクな事態を覚悟した。 その時、 ふいに頭上から、スルッと長いヒモのようなものが投げ込まれた。 「!?」 えっ、と思った瞬間。 ヒモだと思ったそれは、しゅるしゅると皆黒の腰に巻きついて、落下しないように彼の身体を支えた。 「…、」 なにが起こったのかサッパリ分からない。 それなのに、 体が、勝手に崖の上へと引き上げられていく。 その状況に驚きすぎて声も出ないでいると、 すとん、と地面の上に落とされたとたん、 長いヒモは再びしゅるしゅると皆黒から離れていき、遠く頭上にある木の枝へと消えて行った。 「――、今のは…なんだ…?」 ヒモだと思ったものは、長い植物の(つる)だった。 しかも植物なのに、明白な意思を持って皆黒を助け、彼を崖の上まで引き上げて、高い木の上に舞い戻って行ったのだ。

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