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皆黒とルイード4
皆黒はゆっくりと立ち上がると、じっと上を見上げた。
「…誰か、いる…?」
空まで届きそうなしなやかな木は、あまりにも高すぎて、そのてっぺんが見えない。
――けれど、
わずかながら枝の狭間に《なにかの気配》を察して、その一点を凝視した。
(とてつもなく禍々しい精気を感じる…)
皆黒は、息を飲んだ。
頭上からは不気味なほど怪しい気配が降り注ぎ、
辺りに暗たんたる空気が漂っている。
身震いするほどの慄きが、背筋を走った。
(これが、ソルが話していた《ルイード》か…?)
皆黒は、首を傾げた。
森の精だとしたら、あまりにも禍々しい。
仮に、大木の精霊だとしても、なぜフラフラ出歩けるのか謎だ。
(本来、木は動かない。もちろんそれに付随する精霊も、その場から移動できないはずなのに…)
…水や、火の精霊じゃあるまいし…
「お前は何者だ?!」
皆黒は大声を張り上げた。
「大木に寄生している何か? それとも本体は動かないが、魂は自由ってことなのか? 答えろ!」
そう叫んだとたん、
ザザッと葉擦れの音が鳴り、上から数枚の葉が降り落ちてきた。
「…おいおい、逃げられた、のか…?…《巨木の精》なんて大ウソだろ、あれ」
気が抜けると同時に、妙な汗がこめかみを伝った。
それを手の甲で拭った皆黒は、
細長い息をついて、その場にへたり込んでしまった――
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