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皆黒とルイード5
どうにか無事に屋敷までたどり着いた皆黒は、
森で遭遇した経緯についてソルに話して聞かせた。
すると、
「あ、たぶん、それルイードだ」
すぐさまそんな答えが返ってきた。
やはりそうか、と思うと同時に、
どうにも腑に落ちない点が気にかかる。
「…お前、ルイードは古木の精だと言ってなかったか? そんなヤツがなんであんな場所にフラフラ行けるんだ」
「知らないよ。でも蔓みたいな枝みたいな腕を持っていると聞いたから、そうなのかなと思っただけ。…でもおかしいな」
うーむ、とソルが考え込むようにまつげを伏せた。
「ルイードは人間キライだと言っていたのに、なぜ皆黒を助けたんだろ」
「――」
「よほどドンくさい歩き方をしてたのかな、皆黒」
「…お前っ、よくそんなこと言えるな」
吐き捨てるように言いつつも、やはり同じことが引っかかった。
姿は見せなかったけれど、あれは間違いなく皆黒を助けてくれた。
――人間キライの、ルイードが…
腕のような長い蔓を伸ばし、
彼が崖下に転がり落ちないように、引っ張り上げてくれたのだ。
じっとこちらを見つめる気配に、殺気などなかった。
むしろ不安そうな、警戒するような感じすらしていた。
「皆黒? 大丈夫か。よほど怖い思いをしたのか?」
珍しく労わるような様子を見せたソルがおかしくて、
彼はくすりと笑って首を振った。
「いや、全然。むしろ楽しかったかな」
皆黒は、くすくすと笑った。
ルイードが、何者だろうが、なんの精霊だろうが、関係ない――
「…まぁ、世の中は不思議なことばかりだから。…どこかにひっそりと生えた草の露から、小さな命が生まれたとしても、おかしくはないかもしれないな」
魂が、
この現世で生きていたいと、
求めたのかもしれない...
――皆黒は、ルイードという巨木の精が気になった。
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