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皆黒とルイード6
朝早くにソルが河に出かけてしまうと、
皆黒は、再び身支度を整えて森に向かった。
もちろん、ルイ―ドに会うためだ。
今度は迷わないように、
慎重に歩きながら、崖の近くの道を進んで行った。
「…ルイードは河が分離した渓流のほとりにいるんだっけか?」
しかし、それは《巨木》のことだ。
河べりにひっそりと立つ古木なら、水精霊マールと仲良くなるのも頷ける。
――だが、
皆黒が会いたいのは、木ではなくて《ルイード》だ。
もし宿り木から離れて移動できるのであれば、
もう一度、あの崖の近くで、会えるような気がした。
「ルイード!」
以前助けてもらった場所を訪れて、皆黒はその名前を呼んだ。
でも、応答はない。
「ルイード! いないのか?!」
今度はさらに大きな声で叫んでみる。
が、やはり返事がない。
しばらく待ってみたものの、なにかの気配がする様子もない。
皆黒は諦め顔でため息をつくと、
足元の切り株に、身に着けていたフォークロアの腕輪を置いて、
静かに立ち去ることにした。
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