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信頼してる理由
あの組が拐った。だとか一人で迷子になったのかもしれないだとか。ワーワー騒ぐだけ騒いでる上司たちに俺たちは眉を寄せていた。
「やべえよ、親父が帰ってきたらどやされるだけじゃ済まねえぞ…」
そうして自分の事だけしか考えてないそいつに腹が立ってくる。若自身の安否はどうでもいいのかと舌打ちを小さく零したが、それは早河も同じだったようだ。
「お前ら探しに行ってこい!若が死なねえように護れ!」
若が死なねえようにしたいなら、俺達みたいな慣れない武器を持つ奴等じゃなくて、慣れてるあんたが行くべきだろうと、ついついそいつに突っ掛かった。
「さっきから自分のことばっかじゃないスか。」
「ああ!?何だと!?」
「どやされるだけじゃ済まねえとか、俺達みたいな奴等に若を護れだとか。今は親父に言う言い訳を考えるのでいっぱいいっぱいですもんね。」
「テメェ黒沼…!」
胸倉を掴まれ頬を殴られる。そんなものどうってことないからそいつを睨み続けた。周りの人達がそいつと俺を引き離しとりあえず探しに行ってくれと頼まれて早河と二人で外に出る。
「どこにいそうだとか、何も手掛かりないのに探しにいけって無謀だろ」
「………………」
「なあ、おい!早河!」
「うるせえ、さっさと探せ。」
「お前は何も思わねえのかよ!そういうところが本当うぜえ!!お前もさっきみたいな自分のことしか考えてねえ奴等と一緒か!!」
そう怒鳴ると殺気の籠った目を向けられる。
「あんな奴等と同じにすんじゃねえよ」
一瞬体が動かなくなった。目を逸らされて早河は先に走ってどこかに向かう。俺もやっと動くようになって慌てて早河を追った。
どこを探したらいいのかもわからずに、けれども休んでられなくて辺りをキョロキョロ見回したり怪しいと思うような場所を探したり。
「…いねえな」
「くそっ」
何をしたらいいのかもわからないままそこで立ち止まっていると携帯が震えた。携帯を確認すると上司からの電話で。
「はい」
「今すぐ○○市にある廃工場に行け。」
「そこに若がいるんですか」
「ああ、早く行け」
どうしてこの人は自分で動こうとしないのだろうか。イライラしながらも「わかりました」と通話を切り早河に伝えると、顔を顰めて俺に「行くぞ」と低い声で言う。
「気を付けろよ、相手がいるかもしれねえんだ」
「お前もな」
早河の肩を軽く叩く。
俺達二人だけで若がいるらしい場所に向かう。無事でいてくれる事を祈って足を進めた。
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