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信頼してる理由
焦ってとりあえず上司に連絡を入れると車を二台寄越してくれて、倒れてる敵達を車に乗せ組に運ぶことと、若と俺と早河とでトラの所へ向かった。
「あらあらまあまあ、とりあえず処置するから二人は外にいて」
「頼む」
若は自分のせいでこうなってしまったと落ち込んで、さっきから何も話さない。何て言葉をかけたらいいのかわからなくて、若の座るベンチの横に静かに黙って立っていた。
「早河、大丈夫だよな?」
「大丈夫ですよ、絶対」
「…俺のせいで、悪かったな。」
「若のせいじゃありません、謝らないでください。」
早河が刺されたのは気を抜いた俺が悪いし、そもそも若を護衛できてなかった奴らが悪い。そんなことを思いながらトラが出てくるのをずっと待っていると、足音が聞こえてきてそっちに目をやる。するとそこには親父がいた。
「早河は」
「今トラが診てくれてます。」
「そうか。晴臣、お前は怪我はないか」
「ああ」
「いや、さっき確認した時、腹に蹴り入れられたみたいで青くなってました。」
「命!言うなよ!」
言わないわけにはいかないでしょうと若を見ると「うっ…」と視線をそらされた。
「見せろ」
「た、大したことないんだって!」
「いいから見せろ」
「チッ…命がいうからぁ!」
渋々服をめくり親父に腹を見せた若。そこはやっぱり青くなっていて親父はそれを見て眉を寄せた。
「後でちゃんとトラに診てもらえ。わかったか。」
「わかったよ…」
若の頭を撫でてベンチに腰を下ろした親父は真剣な顔で俺を見る。
「二人だけで行かせて悪かった。」
「いや、あれは親父が謝ることでは…!」
「俺の責任だ、あいつらには適当な処分を下す。…晴臣を守ってくれてありがとう。」
「それは当たり前のことなので礼なんていらないです。」
口元だけ柔く笑う親父に首を左右に振って見せた。
「早河起きたわよ」
その日の夜、早河は目を覚まして「腹が痛い、まだ痛い」とブツブツ呟いていた。
「えー、っと、庇ってくれてありがとな」
「あー…庇うつもりはなかったんだけどな。」
「じゃあ何でだよ」
「知らん、勝手に動いてた。」
無口だと思っていた早河が今は意外と話をしてくれる。
「俺、お前のこと誤解してた。いい奴なんだな。」
「何だそれ。」
「悪かったな。」
「何がだよ」
ふっと笑う早河、その日以来俺たちは前より話すようになった。その日以来遠かった距離も少し近くなった。
「───ってことあっただろ。」
「…そうだな、懐かしい。」
「昨日その夢みてさ。」
「へえ。」
「でも夢見るってことはぐっすりとは眠れてないってことだろ。」
「………」
「だから寝る。」
「は?殴られてえのか」
いつもの幹部室、いつもの早河。
これはあの日の出来事があったから、ここに存在する"いつも"の光景なんだと思って頰が緩む。
「何笑ってやがる、仕事しろ」
「はいはい。」
今の早河との関係を嬉しく思った。
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