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世那の居場所

何でこんな事になっているんだ。 「八田さん、本当すみません。」 「いや…」 母さんは家に八田さんを呼び出した。八田さんを見て母さんも咲希も顔を赤く染める。そうだよな、八田さんかっこいいもんな。…って、そうじゃない! 「八田さん嫌いな食べ物とかある?」 「いえ、無いです。」 「よかったわぁ。どうぞ食べて?」 「いただきます。」 八田さんに飯を食わせるんだ!と張り切っていっぱい料理を作って八田さんの前に並べている。少し困惑しながらも料理に箸を伸ばして口に運んでくれる八田さん。 「あ、美味しい」 「本当?お口に合ってよかったわ!」 未だに俺はこの状況が理解できなくて、頭の中はグルグルしてる。けど料理を食べて美味しいとふんわり笑ってくれた八田さんに安心した。 「大切な息子さんが死んだなんて嘘をついて…すみませんでした。」 飯が終わってすぐに八田さんはそう言って土下座をした。額が床に着くんではないかと言うくらいに深い土下座。 「八田さん!?やめてください!!」 「せな…光輝は黙ってろ。」 「ちょ、母さん!」 母さんを見ると怒っているのか目を釣り上げて八田さんを見下ろしている。 「頭をあげてください。…怒っていません。光輝を守ってくれたんですもの。そりゃあ私たちは本当に光輝が死んだと思って悲しかったけど、今は感謝してます。ありがとうございます。」 母さんも頭を下げる。俺はどうしたらいいのかわからなくて取り敢えず一緒に頭を下げた。 「これからどうするかは光輝の自由です。」 「はい、光輝に決めさせます。…八田さん?またここに来てくれないかしら。豪華な食事は作れないけれど、あなたはとてもいい人だからまたお話ししたいわ」 「はい、また来させてもらいます。」 柔らかく笑う八田さん、そんな表情初めて見た。 「八田、さん…?」 「なんだ?」 「…俺は、浅羽には帰れないんですか?」 そう聞くと八田さんは困ったように笑う。それから髪をくしゃくしゃ撫でられた。 「お前の事を心配してくれる家族がいるのに、また心配かけるのか?」 「でもっ」 「お前は明るい綺麗な世界で生きたらいい。それに会おうと思えばいつでも会える。」 「いや、です」 「は?」 「嫌です!俺浅羽に行きます!俺の自由だって言いましたよね!?なら俺は浅羽に帰ります!!」 そうして母さんと咲希に向き直り頭を下げる。 「俺は絶対死なない。たまにはここに帰ってくる、だから行かせてください。」 「おいっ」って焦ったように言う八田さんの声、そんなの聞いてられずにずっと頭を下げてるとポンっと手が頭に置かれた。 「あなたの人生よ、好きにしなさい。けれどたまに帰ってくるっていう約束をして。それだけは必ず守ること。」 「…はい!」 「いつでも待ってるわ。」 母さんが優しく微笑む。許してくれたことが嬉しくて思わず涙をこぼした。 *** 「って感じ。だから鍛えないとって今は稽古場で鳥居にいろいろ教えてもらってるぞ」 「俺も稽古場行ってこよっかな」 「命はやること終わらせてからだ。早河にお前が逃げないように見とけって言われたんだよ。」 「…八田くん、そこをなんとか見逃しては…?」 「くれないから早く溜まってる分やれ。お前が本気になればこんなの一時間とかからねえだろ。」 「はいはい。」 資料を渡されて嫌になる。うぅー…と嫌な顔をしてると突然幹部室のドアが開いて、騒がしい声が聞こえた。 「命さぁん、お仕事まだですー?」 「あ、ちょ、鳥居さん!ノックも無しに入っちゃダメじゃないですか!」 「命さん〜!!」 鳥居と世那が目の前でわちゃわちゃと騒いでいて稽古してたんじゃないのかよと眉を寄せた。 「あ、ほら、鳥居さん謝って…」 「世那うるさいですよ〜。」 「う、わっ!」 世那の顔に手をやって黙れとでもいうように向こうに押しやった。 「仲良くしろよ」 「仲良いですよ〜、仲間なんですからぁ」 「そうかよ、」 世那は後ろで困ったように笑ってる。 鳥居はそんな世那と肩を組んで 「それに、世那とはもう家族です〜」 そういう鳥居に嬉しそうに笑った世那。 すごく微笑ましく思えた。

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