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鳥居と赤石の喧嘩事情 『少年くん』
「…なあおい、これどうしたんだよ。」
「鳥居と喧嘩したんだと。」
ソファーで眠っている赤石。その顔にはいくつか痣があって鳥居と喧嘩をしたと聞いて納得がいった。
「何の喧嘩だよ」
「知らねーよ。気になるなら本人に聞け。」
八田に冷たくあしらわれた。寝てる赤石を起こしてもきっと機嫌が悪いだろうし…と仕方なく鳥居のところへ向かう。
「鳥居ー?」
「…あ、命さん〜!」
鳥居の部屋に行ってドアを開けると赤石同様顔に痣を作った鳥居がいた。
「…赤石と喧嘩したんだって?」
「その話ですかぁ…喧嘩というか、稽古をしてたらいつの間にかそうなっててですね…」
「赤石と稽古してたのか?」
「赤石さんは途中から来たんですよぉ。で、試合形式でやってみようって俺と赤石さんとで当たって…」
***
一時間前。
「赤石さぁん、日頃の恨みを込めて本気出しますねぇ。」
「本気出しても俺には勝てないでしょ?そんなこと言ってて後で恥ずかしくなるのお前だよ。」
「それはどうでしょう〜」
稽古場にいた俺と赤石さん以外の全員は一言も誰も話さない。静かに赤石さんと向かい合ってると突然「そういえばさぁ…」と赤石さんが話し出す。
「鳥居はみっちゃんのこと全然知らないよね、実は俺と言えないことしちゃってたり…」
「別にそんなこと聞いてないんですけど〜」
「のわりにはイライラしてるね」
そりゃそうだ。命さんとあんたが一緒にいるのにすらちょっとムカつくんだ。なんであんたが幹部で俺が幹部補佐なのか。
「早く始めましょうよ〜」
「うん、そうだね。誰か合図ちょうだい。」
そうして誰かの始めっと言う声で俺も赤石さんも地面を蹴った。
殴って、殴られて、お互いに体力がなくなってきて、殆ど同時に床に倒れ込んだ。
「あ、りえない…本当むかつく、殺してやりてえ」
ついつい本音が出て、ダメだと口を噤むけれど赤石さんには聞こえたみたいでニヤニヤと笑っている。
「殺すの?俺を?…ぶっ、ははっ!!無理無理!お前に俺は殺せないよ!!」
「あんたのその感じが嫌なんですよ。何勝者ぶって余裕で笑ってるんです〜?残念ながら引き分けですよ。」
「は?お前これで終わりだと思ってんの?」
「…何、言って…」
そう言った途端、赤石さんは起き上がり俺に馬乗りになって拳を振り下ろしてきた。
血の味が口の中に広がる。何とか下から抜け出そうと藻掻けば俺が上になって赤石さんを見下ろした。そこでニヤリ笑い拳を落としていく。
こんなところをユキくんに見られたらきっと怖がらせて、俺のこと嫌いになっちゃうんだろうな。頭の隅で友達って言葉がチラチラと写るけれどそれは俺を止めるストッパーになってくれない。
「鳥居ぃ、お前はそんなんだから幹部になれないんだよ」
「あ!?」
「自分の力をコントロールできない奴を幹部になんてできないだろ。」
俺に何度も拳を打ちつけられてるのにニヤニヤとした笑いを無くさない赤石さん。何だか怖くなって赤石さんの上から退くと、思い切り腹を蹴られて稽古場の隅にやられた。
「もっとちゃんと成長しなよ、みっちゃんの側にいたいならね〜」
その言葉を最後に赤石さんは稽古場から去って行った。
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