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痛いの痛いの飛んでいけ 『少年くん』
ゴンッと音がして嫌な予感しかしないけれど、振り返る。
そこには、壁を向きながら尻餅をつき、隣にはお絵かき帳が落ちている。そしてユキは手を額に置いていた。何で壁で額をぶつけるの。
「ユキ?」
「うぅ──…」
唸りながら俺を見上げるその顔をよく見ると、目には涙を貯めていて、唇はわなわなと震えてる。
泣くのを我慢していることがわかって、ユキに近づき腕を広げた。
「おいで」
よたよたと立ち上がり、俺の腕の中にポスンと収まったユキは、そのまま泣き出して「痛いぃっ」と声を上げる。
「よしよし、びっくりしたな」
「痛かったぁっ!」
「痛いの痛いの飛んで行け」
そう言いながら、ユキの額を撫でる。
ユキは涙に濡れた顔を上げて「なぁに、それ」としゃっくりをしながら聞いてくる。
「んー、おまじない?痛いのなくなった?」
「…あ、無い!痛いの、無いよ!」
ふふっと笑って、俺の胸に顔を押し付けるユキ。
そして気になったことを聞いた。
「何でおでこぶつけたの?」
「…あ、あのね、これ、見せようと思ってたの…そしたら曲がるの、忘れちゃったの」
「絵?」
お絵かき帳を見せられる。そこには黒い雲と黄色の雷と、それから一人の男の子。角があったり、シマシマのパンツを履いてることから、雷様かな?と考えを巡らせる。
「この前ね、テレビで見たよ!カミナリ様、ゴロゴローって!」
「へえ。上手だね」
「ふふっ。だからね、命に見せたかったの!カミナリ様はね、可愛いから、怖くないよって!」
少し赤くなった額に、頬。
可愛くてその頬にキスをすれば、嬉しそうに笑う。
「あのねぇ、だから、これあげるの!」
「くれるの?俺に?」
「うん!これもね、おまじないなの!」
可愛さのあまり、小さな体を抱きしめるとユキも抱き締め返してきて、二人で一緒に笑いあった。
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