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揺れる 『少年くん』

きっとユキは嫌がるだろう。 けど我慢してもらわないといけない。だってそれくらい大切な用事がある。 「…ユキ、あのさぁ」 シロと遊んでいるユキに声をかけると「なぁに?」と振り返ってきた。意を決して言葉を告げる。 「明日から早河の家に泊まりだって言ったらどうする?」 そう言うとユキは時間が止まったみたいに固まった。 それから少しして「……お、泊まり、命は?命もいる…?」と不安そうな声で言う。 だけど、ごめん。 「俺はいないな」そう言った途端泣き出した。 嫌だと首を振る、俺と一緒がいいと言う。 「悪い…どうしても無理なんだ。」 ────どうやら俺の本当の親が死んだみたいで。 翌日、嫌だと泣き続けるユキを無理矢理早河の家に連れてきた。 「頼む」 「ああ」 早河はこうなることがわかっていたらしくて、泣き続けるユキを見ても驚きやしない。 「ユキくーん、久しぶりやなぁ。ってあらら、泣いとったらせっかくのイケメンが台無しやで?」 「…琴、くん」 「俺と遊ぼ?」 八神がユキに優しく笑いかける、その様子をぼーっと見てると早河が俺の頭をぽんっと撫でた。 「変な事、考えるなよ」 「…意味わかんねえ」 はっ、と笑いユキに「じゃあな」と言って玄関のドアを閉める。 突如訪れる虚無感。胸が締め付けられそうだ。「…行かねえと」そう言った自分の声は自分が驚くくらい冷たかった。

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