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揺れる
「お兄ちゃん」
「ん?」
少しして目を覚ました蓮が俺の足元に寄ってきた。
「僕、お勉強しないと怒られちゃう」
そう言って不安そうな顔で俺を見上げる。
「怒られる?」
「うん。お父さんに、すごく怒られるの。」
怒られるって言葉に引っかかった。言葉で怒られるのか手を出されるのかって。「なあ、蓮」って言うと「なぁに?」とまるでユキみたいに言って首を小さく傾げた。
「勉強しろって、言われるだけか?」
聞いてみると首を横に振って蓮は自分の頬に触れた。
「頬っぺ叩かれたり、たくさん、痛い事されるの」
思い出して怖くなったのか目に涙を滲ませる。蓮に腕を伸ばし抱きしめてやると「お兄ちゃん?」と不思議そうな声でそう言われた。
「ごめんな」
俺が知らない間に、こんなことになっていたなんて。
「お兄ちゃん!お腹すいた!」
「おー、何が食べたい」
今日は勉強はしなくていい。と言うと嬉しそうに笑った蓮。それからまた少しするとお腹がすいたと言って俺の膝の上によじ登り不満そうな顔をした。
「えっとねぇ…わかんない」
「…好きなもの何かねえのか?」
「好きなもの…あ!僕、おうどん好き!チュルチュルするの好き!」
「うどんな…」
確か冷凍のうどんがあったはずだ。蓮を膝から降ろしユキがいつも見てるアニメのDVDをセットしてやって「テレビ見てろ」って言って俺はキッチンに入る。
長いため息が出た。
俺はどうするべきなんだろう。
そんなことを考えながらうどんを作っていると蓮が大声で「お兄ちゃん!僕!ネギ嫌い!」と叫んできて「わかった」と返す。特に何ともない会話、だけれど俺は本当の家族とこうして話したことがなかったから嬉しく思った。
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