16 / 95
揺れる
「おうどん!卵もあるー!」
「熱いから気をつけろよ」
「うん!」
チュルチュルとうどんを啜る蓮。熱いぞって言ったのに結構の量を一気に口に入れて「あち!あち!」と水をゴクゴク飲んだ。
「気をつけろって言っただろ」
「美味しい!」
「…聞いてんのかよ」
ニコリ笑って食べ続ける蓮に自然と笑みが漏れる。
「なあ、蓮」
「んっ、なぁに?」
「お前、これからどうしたい」
「これから…?」
そう言うと「わからない」と言った蓮に「だよな…」と呟いた。
「お兄ちゃんは、僕がいたら、嫌…?」
「嫌、とかじゃなくて…」
「…僕のこと、みんな邪魔っていう」
「違う」
邪魔なんかじゃない、そんなことあるわけがない。
どうしたらいいんだ、頭が痛い。
「お兄ちゃん、僕ね、あんまりわからないの」
「何が」
「お父さんと、お母さん、死んだんでしょ?…でもね、泣いたりなんかしないし、胸も痛くならない、悲しいなって思わないの」
「…俺も、思わない」
それはきっと悲しいことなんだ。
本当の親が死んだのに何も思わないのは。
「蓮、俺な、一緒に住んでる奴がいるんだ」
「…うん」
「14歳の、男の子なんだけど」
「わ、大っきい…」
「あ、お前何歳だ?」
「僕10歳だよ!」
両手を広げて10を表した蓮の髪を撫でる。
「そっか。…それで、その…俺と住んでる奴がユキって言うんだけど、ユキにも聞かねえと」
そういうと小さく頷いた蓮は少しだけ悲しそうに笑った。
ともだちにシェアしよう!