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揺れる
その日、蓮をベッドに寝かせてやって、俺はリビングのソファーで眠った。けれど夜中に俺を起こしに来た蓮が一人は寂しいと言うから、結局ベッドで寝ることに。
「お兄ちゃん、もっと、そっちいってもいい…?」
「寝れねえの?」
「…うん」
「おいで」
ユキにいつもしてやるように蓮を抱き寄せて背中をポンポン撫でてやる。俺の胸に顔を埋めるようにして少しすると眠りについた。長い睫毛が揺れる、薄い唇、綺麗に通った鼻の筋に透き通るように綺麗な肌。俺の弟のくせにやけに顔が整ってる。
一人が寂しくて眠れないなら、いつもはどうしてたんだろう。まさかあの親が一緒に寝てくれるってわけないだろうし。
普段、あまり眠れてなかったのかもしれない。
いつの間にか蓮は俺の服をぎゅっと握っていた。
蓮にはユキとはまた違う可愛さがあった、それは兄弟だから思う可愛さなんだろう。
そんなことを思っていた時、ローテーブルに置いていた携帯が震える。時間はもう午前の1時を過ぎていてこんな時間に誰だ、と携帯を見れば早河からの電話だった。
「はい」
「…悪い、こんな時間に」
「いや、起きてたからいい。」
「そうか。…ユキくんが、泣き止まなくて」
「あー…、代わってくれるか?」
「ああ。…ユキくん、命だよ」
カサカサ、音がして「…命?」とユキの小さな声が聞こえた。
「ユキ」
「命…命だぁ!」
「早く寝ないと。いつもはもうとっくに寝てるだろ」
「でも、でもぉ…命、いないもん…」
グズグズ、涙声のユキに小さく笑った。
「早河が一緒に寝てくれると思うから。今日お泊まり頑張れたらユキはまたお兄さんになれるぞ」
「…お兄さん、なる」
「ああ」
「そしたら、命、僕のこと、もっと好きになる…?」
「なるよ」
「…僕、頑張る。明日…明日お迎え、来てくれる…?」
「……いい子にしてたらな」
いけるのかわからない。蓮をどうしたらいいのかもわかってない。ユキに「おやすみ」と言ってから電話を早河に代わってもらった。
「悪いな」
「いや…で、何もなかったか?」
「……それが、さ」
早河に蓮のことを話した。早河は何とも言えないようで電話の向こうで小さく息を吐いた。
「その、蓮くんはお前といたいって、言ってるのか?」
「わかんねえ、今日は俺のところにいて、それから蓮のしたいようにさせてやってくれって…親戚に…」
蓮の髪を撫でる、モゾっと動いたから、起こしてしまったか?と不安になったがその様子はない。
「とりあえず、そのことはユキくんには言うなよ。」
「ああ」
「明日ユキくんを迎えに来れるのか?」
「わかんねえ…もしかしたら、無理かも」
「…わかった。あんまり無理するなよ」
軽く返事をして電話を切った。
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