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揺れる

*** 「命ー!!」 「おう、悪かったな、ユキ」 「僕、いい子してた!!ね!早河さん、僕いい子だった!!」 「そうだね、すごくいい子だったよ」 ユキが俺に抱きついてくるのを見て早河は柔らかく笑う。ありがとな、と早河に言うと後ろから八神がふらりと現れて早河に抱きついた。 「命さん、おはよぉ」 「おはよう、お前もありがとな」 「ううん。ユキくん可愛かったしぃ、またおいでなぁ」 うん、と笑って二人に手を振るユキに俺もついで手を振って二人で家に帰る。部屋に入った途端ユキは顔を歪め俺に勢いよく振り返った。 「……誰かいたの…?」 「は?」 「…違う、匂い、違う」 泣くのを堪えているみたいでユキ?としゃがみこんでユキの頬を撫でようとしたら嫌だって俺から少し距離をとる。こんなこと今までなかったからショックで空ぶった手を強く握った。 「誰と、一緒にいたの…?」 「……ユキ、それは…」 「誰といたのっ!」 完全に泣き出したユキに頭を抱えたくなる。 「悪い、まだ言えない」 「…み、こと」 蓮がどうしたいか決めてからユキに話すべきだと思ってるから、まだ言えない。 言ってはいけないと言い聞かせながらユキの体を抱きしめる。 「お前のこと、大好きだよ、ユキ」 「う、ん…」 「俺のこと、嫌いにならないでくれ」 俺と蓮が少し強くなるための時間をくれ。 こくり頷いたユキに罪悪感が増した。

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