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揺れる
「ユキ」
「…………」
「ユーキ、怒ってんの?」
「…怒ってる」
「何でか教えてくんねえか?」
「…やだ」
ふい、と顔を背けるユキ。
はぁ、と小さくため息が出た。
蓮はテレビを見てキャッキャと笑ってる。
子供を育てることはこんなにも大変なことだなんて知りやしなかった。
「ユキ、何が嫌だった?」
「……命が、取られちゃう…」
「蓮にか?」
「うん」
椅子に座るユキに、しゃがんでユキの顔を覗き込む俺。「あのさ」とユキの手を握りながら言うと少し顔を上げたユキが俺の目を不安そうに見つめる。
「もちろん、ユキは俺の大切なやつだし、大好きだ。…でも、蓮も、俺の弟だ、大切なんだよ。」
「…わ、わかってるよ!」
ユキには珍しく大きな声、わかってる、と言って涙目になる。
「じゃあ、なんで怒るんだよ」
「わかってる、けどぉ…」
いやいや、首を振ったユキ、どうするか悩んでると俺の携帯が震えた。誰だ?と確認をすれば八田からのメールで今からここに来るという。面倒くせぇと思いながらも、わかったと返事をしてまたユキに向き直った。
「ユキ、ちょっと部屋いこっか」
「…う、ん」
蓮はテレビに夢中になってる。今なら大丈夫だろうとユキを立たせて寝室に連れていく。ベッドの淵に座らせ触れるだけのキスをした。
「…もっと、…もっと、ちゅー、したい…。」
「ああ」
「僕は、命の恋人、だもん…。」
一粒の涙がユキの目から溢れて俺の手に落ちた。
笑ってユキの頬に触れる、その手にスリスリと寄ってきて可愛いなと抱きしめた。
「蓮のいないところで、キスしよう」
「蓮くんに、見られちゃダメ?」
「だめ」
そうしてキスをして、甘い雰囲気が生まれた。のに
────ピンポーン
それを壊す音が聞こえてイラっとしながら部屋を出て玄関に向かう。
「よっ」
「何だよ」
何の用か知らねえけど、八田がやってきた。
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