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オメガバース

「命」 迎えに来てくれた早河を目を映した途端、涙が溢れてきた。 「帰ろう」 起こされて支えられながら車に入れられ、俺の家に向かう早河。車内は静かでただ俺の鼻をすする音だけが鳴る。 「…その様子だと、俺の予想した通りか」 「…ああ」 「薬は?」 「もらった」 「そうか」 運転する早河が手を伸ばして俺の頭を撫でてくる。 俺にとっては家族で、兄貴のような存在だからそういうことをされるともう我慢できなくて。 溢れてくる涙を拭うこともせずにただポタポタと雫を膝に落とす。 「…ぅ…っ」 「命…」 「…俺、こんなこと、なると思って、なかった…っ」 「ああ」 「どうしたら、いいんだよ…」 情けない言葉を泣きながら吐き続ける。何を言うわけでもなくただそれを聞いてくれる早河に、今はすごく助けられた。 *** 「ほら、寝てろ」 「…悪い」 「気にするな」 家についてベッドに寝転んだ俺に布団をかけてくれる早河に甘えるように手を伸ばす。 「なあ、仕事戻らねえといけねえのか…?」 「…何だよ、もう少し居て欲しいのか?」 「うん」 正直にそう言うと手を取られて「わかった」と返事をもらえた俺は安心して目を閉じる。 「ちゃんと自分の口で親父に話せるか?」 「…うん」 「明日は来れそうか?」 「…行きたくねえ」 布団を頭まで被ると上から一定のリズムでポンポンと撫でられて眠気がやって来る。 「…なあ」 「あ?」 「赤石と、番の話、してただろ。」 「ああ」 「…あれ、本気…?」 「お前がそれでいいならな」 俺の手を握ったままだった早河、その手に込められる力がぐっと強くなった。 「…ちょっと、本気で考える。」 布団から顔を出してちゃんと早河を見てそう言うと、柔く笑って「ああ」と髪を撫でられた。優しいその手に思わず目を閉じる。 「また夜に来る」 「うん」 「ゆっくり休んどけ」 そのまま、まるで吸い込まれるかのように意識を手放した。

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