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オメガバース
早河side
銃声があったと連絡が来て、その近辺を探っていると一緒にやって来ていた鳥居が泣きながら俺の方に走ってくる。
何があったのかはわからねえけど、鳥居がこんな風に取り乱すくらいだ、それだけのことがあったのだろうと鳥居に案内を頼めば「見たくない」と首を左右に振って膝から崩れ落ちる。
「…どこに何がある」
「う、海、浜辺に…っ、命さ…」
──命が?
一気に恐怖が襲ってきて、鳥居はそのまま組に帰るように指示をして俺は言われた通り浜辺にやって来た。
そこでは鳥居の他に一緒にやって来た組員達が項垂れていたり、泣いていたり、嫌な予感と恐怖に押し潰されそうになりながらも組員達を掻き分け真ん中に血を流しながら倒れているそいつに近づいた。
「…み、こと…?」
チャカを力のない右手で持ったまま頭から血を流して倒れている。今はこの事態を受け止めることも出来ずに、とりあえずこれを早く処理しないといけないと組員達に指示を出す。
その後俺は血の気のなくなったとっくに死んでいる命を抱き抱えて車に移動し、そのまま組に連れて帰った。
命の血で汚れた服が赤黒く変色して、けれどそんなものも気にならず、なんとか仕事を続けて日付が変わったあたりにやっと処理を終えた。
仕事を終えてから、俺のせいなんだと思い始めてくる。何で俺は命に対してあんなに酷いことができたのだろう、と。
ユキくんを罪悪感から救ってやるために取った手段が命を追い詰めるだけになってしまった。結果これだ。
「…っ、」
涙が零れて、溢れてくる嗚咽を口元を手で覆うことで止めた。苦しい、こんなに辛いと思ったのは初めてで、でも俺にはそんなことを思う資格すらないのだと思う。
1人だけの幹部室で椅子に座り泣く俺を、きっと命は恨んでいるのだろう。
もう、それでいい。
何度も「ごめん」を呟いて、そして気付けば朝になっていた。
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