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八田と蓮
「あらあら、すごい熱ね」
蓮を連れて行くとトラが「なんだか命に似てない?」と言うのを無視して「蓮をみてくれ」と言うと「はいはい」と蓮をみてくれる。
「注射、しない…?」
「ええ、しないわよ、だからちょっとお腹ポンポンさせてね」
俺は近くのソファーに座って2人の様子を眺めていた。
「風邪ねぇ、お薬飲んでゆっくり寝たら治るわよ」
「お薬やだ…」
「でも、お薬飲まないとしんどいままよ?」
「うぅ…やだぁ…」
わんわんと泣き出した蓮、トラが困ったように笑うから近づいて蓮を抱き上げ、背中をトントンと撫でる。
俺の肩に顔を埋めて大人しくしてる蓮はやっぱり体が辛いのか息を荒くして眠りだす。
「とりあえずちょっと寝かせてあげなさい」
「ああ」
「で?その子は誰なの?」
「……命の弟だ」
「あら、やっぱり?顔が似てるものね」
ベッドに寝かせて、薬が嫌だという蓮に今のうちに座薬を入れておこうという話になり、トラがそれをしてくれた後に蓮が起きるまで俺はトラと話をすることになった。
「で?何で命の弟をあんたが?」
「…命の親が事故で死んだんだ、それで命が家を出てきた後に生まれた蓮が1人になるからって命が引き取ったんだけど…ユキくんが嫌がってな、それを察した蓮が俺のところに来たんだ」
「察したって、こんな小さい子がそんなこと察せるの?」
「…命と同じだ、蓮も虐待を受けてた」
「チッ…自分の子供をおもちゃか何かと思ってるようね…」
指を机に当ててトントンと音を鳴らし出した。
「こんなこと、言っちゃダメだけど、罰が当たったのよ」
「…ああ、俺もそう思うよ」
顔を赤くして眠る蓮をみながら、その通りだと頷いた。
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