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命の本当 『少年くん』
「何だよ急に呼び出して」
「あら〜いらっしゃーい」
八田との話が気になって命を呼び出した。ダルそうにしてる命がソファーに座ってハァ、と溜息を吐く。
「疲れてるの?」
「…なんか、最近しんどいなって」
「しんどい?」
「うん。風邪ひいたのかも」
両手で顔を覆った命はそう呟いたけど、きっとそれだけじゃないと思う。
「あんたって昔から感情が読めないのよね。」
「はぁ?どこがだよ。いつもすぐに言い当てられるけど」
「本当のあんたの感情よ。」
「…もしかして…今日呼び出したのはこの話をするために?」
「ええ」
鋭い目があたしを見るけど、怯んでなんかいられない。
どす黒い何かが命に纏っているような気もするけれど無視をしてそのまま続けた。
「今の敵意むき出しっていうのが本当のあんたなの?」
「…何言ってんのかわかんねえよ」
「わかってないの?すごい睨んできてるけど」
「もともとこういう目なんじゃないのかよ」
「違うでしょ」
ここに入ってきた時と比べると確かに雰囲気がガラリと変わった。下手をしたら殴られかねないと言葉を慎重に選んで考えてから発する。
「ユキくんのこと、大切なんでしょう?」
「…ああ」
「なら、そのユキくんのために、あんた自身楽にならない?」
「別に今のままでもユキを傷付けることにはなんねえし、俺も困らねえよ」
「このままじゃあんたが壊れちゃうわ。だからちゃんと自分のことを理解するの」
意味がわからない様で訝しげな表情をしたあと、「例えば、何を」とそのままの表情で言う。
「そうねぇ…例えば、昔親にされた事とか」
「っ!」
過去に受けた仕打ちをだんだんと思い出してきたのかあたしを警戒しだす。座ってた椅子から腰をあげるとビクっと震えた。
「昔されたことが怖いのよね」
「…やめろ。その話はするな」
「するわ。あんたを助けたいもの」
「頼んでねえよ。…帰る」
「じゃあ、この先ユキくんが同じような壁にぶち当たった時、あんたはユキくんを助けることが出来ないわね」
そう言うとまだ怪しんでいるらしく、けれど不安を抱えた目であたしを睨んだまま舌打ちをした。
と思えば表情が途端に幼さの混じった何かに怖がる子供のようなものになる。
「恥ずかしいだろ。ユキがあんなに成長したのに、俺はずっとあの時のままだ」
項垂れた命は力なくソファーに倒れこんで「恥ずかしいから、隠したいんだよ」と言った。
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