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命の本当

「恥ずかしくなんてないでしょう。それだけのことをされたんだから」 命の近くに寄って、頭を撫でる。どれだけ親しい人との間でも、何ともないというような仮面を貼り付けて生きてくるのは大変だったと思う。 本当は怖いのに、それを表に出せないんだから。そしていつの間にかそれが当たり前になって今の命を作ってる。 ここまで追い詰めるように言わなければ本当の顔は見せてくれない。 そう考えるとあたしの方まで悲しなってきた。 「恥ずかしくないのよ」 「……俺はもう大人になったんだぞ。未だに過去のこと引きずってるなんて知られたくねえ」 「じゃあこれはあたしとあんただけの秘密にしましょう?」 「……………」 「自分自身が過去の事を受け入れるのはとても大切なことよ。受け入れてから、どうしようもなく悲しくなったり、苦しくなったり、許せなくなったら、その時はまたあたしも一緒にどうしたらいいのかを考えるから」 あたしの目を見た命は目を潤ませて唇をぐっと噛んでいる。 「怖いとか不安に思った時は我慢しなくていいの。そうやって自分を傷つけなくていい」 「…痛みがあると、安心できるんだ」 「じゃあこれからは痛みじゃない他のもので安心できる何かを探してみましょう?」 返事はすることなく、縋るようにあたしの手をとってグッと握った命。やっぱり心の傷はなかなか治らない。早く命が自分を偽ることをせずに済むように考えてあげないと。 その日は帰って行った命だけれど、あのままじゃやっぱり不安で、一応早河に「詳しくは話せないけど、命の様子を見ておいて」と連絡をした。怪しんでるように「わかった」と言われたけど、あれは絶対納得してないわね。 「家に帰ってからも、変に考え込んでなかったらいいけど…」 あたしが家に行くのは違う気がするし。 まあユキくんもいることだし、今まで通りユキくんの前では何も無いように振舞っているんだと思う。 当たり前になった仮面は癖がついてなかなか取れないだろうから。

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