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命が怒った『少年くん』
八田から命がキレてると連絡があった。
急いで車を走らせて言われた場所に来ると、八田の声や骨と骨のぶつかる音が聞こえてきて溜息を吐く。
「八田」
「あ、早河!あれ放っておいたら死ぬよな」
「ああ、そうだな」
俺と八田の目に映るのは一人の男に跨り拳を何度も振り落としてる命の後ろ姿。
少し暗いところだから見えにくいけれど、服にいくつもの返り血が飛んでいる。
「命」
「………………」
「おい、命」
ゆっくりと近づいて振り上げられた拳を掴むとゆっくりと顔だけ振り返った命が俺を睨む。
その目ときたら、流石の俺でも背筋に嫌な汗を流すほどのもの。
「落ち着け、どうした」
「…早河か」
「ああ。そいつ死んじまうぞ。」
「殺そうとしたんだ、だから死んでくれていい」
「殺す理由は?親父の命令じゃないならそれはしてはいけないことだ。帰るぞ」
命の腕をそのまま引き上げる。
それに従って立ち上がった命。よくよく手を見れば赤い血の下に痣ができていた。
「八田、片付け頼んでいいか」
「ああ。むしろそうしてくれ。命を抑えられんのはお前くらいだしな」
命を少し離れた場所におき、八田に仕事を頼めば早く帰れと払うように手を振られる。命のところに帰れば煙草を吸っていてさっきよりは落ち着いたようだ。
「で。お前はなんであんなことした」
「ストレス発散」
「とんだ迷惑野郎だな。本当の理由は?」
「…いや、本当だよ。普段なら何でもない言葉が今日はスルーできなかった。疲れてたみたいだ。手は痛いし、八田にも申し訳ねえな」
そう言いながらもまだイライラしているのか目鋭いままだ。
乗ってきた車に命を乗せ、組に帰る道中で命が一度自らの膝を拳を落として叩いていた。何をそんなにイラついているのかがわからなくて、でもこれ以上「落ち着け」っていう言葉は違う気がして、結局組につくまで何も話をすることは無かった。
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