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命が怒った

「止めろっ!!」 さっきから俺の言葉を無視して、人を殴る命。 殴られている人物は元々、仕事で厄介な奴だったから、殺さなければいいと思っていたけれど、そのレベルに達してしまいそうで、そろそろ本当にまずい。 1度こうなってしまえば命はなかなか止まらないとを知っている。それは俺だけでなく、幹部の奴等も、もちろん、親父も。 「みっちゃん、落ち着いて!」 「うるせえな!!」 止めに入った赤石まで殴られる始末。 そんな赤石もヒートアップして命に殴り掛かる。 「うるさいのはどっちだよ!!」 「くそっ、邪魔だお前」 そう言って赤石の腹を蹴る。 数メートル飛ばされた赤石はその場に蹲って呻いていた。 「おい早河、あれどうするんだよ」 八田が酷い顔をして俺に聞いてくる。 そう言えばお前も何発か殴られていたな。 「止めるしかねえだろ」 「どうやって」 「…わかんね」 とりあえず命に近づいて見る。 鋭い目が俺を見て、さっきと同じように背中に嫌な汗が流れたのがわかった。 「お前、そろそろ本当にまずいのはわかってるだろ」 「ああ?だから何だよ。」 「そのままじゃもう、ユキくんには会わせることが出来ない。それでもいいのか」 「…あいつが俺に会いたいと思うか?さっき、あんなことしたんだぞ」 自分がユキくんにした事がどんなことか、命は理解している。だからもういいと諦めてる。 「お前に嫌われたんじゃないかって、怯えてた」 だから本当のことを教えてやらないと。 ピタッと動きを止めた命、チャンスだって言って赤石と八田が命を抑え込んだ。それに命は抵抗もしない。 「何で、俺がユキを嫌うんだよ」 「それは帰ってからユキくんに聞け。とにかくお前は大人しくしてろ」 命から血だらけの男を奪い取って地面に下ろす。 命の手も血だらけで痛々しい。 「ユキくんはお前の家でトラといる」 「……………」 「帰るか?」 「……いや、帰らねえ」 「は?」 「まだ、帰りたくない」 命が何を思ってそう言ってるのかは知らない。 だから無理矢理家に返すのも違うと思って、はぁ、と溜息を零す。 「組で泊まるか、俺のところに来るか、どっちだ」 「……どっちもしない。朝になったら帰る」 「どっちかしかねえよ。選べないなら俺の家だ。」 「八神がいるだろ」 「関係ねぇよ」 命を立たせて後処理は任せ、二人で車に乗り俺の家に帰る。 その間は何も話すことをせず、ただ煙草を吸って外の流れる景色を眺めていた命は血のついた手を拳にして思い切り力を入れる。…ああまたしてる。その癖。 「命、手やめろ」 「…悪い」 開かれた手からは爪が刺さり傷ついたせいで、命自身の血が滲んでいた。

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