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命が怒った

「ユキくん、命が落ち着くまで少し待っててくれるかな」 「う、うん。…命、悲しいの?」 「少し疲れちゃってるんだ。」 「僕、僕も命にぎゅーってする」 ユキくんは俺と命に近づいてきてそれから命に強く抱きついた。座り込んだ命の顔はもう見えないけれど暴れることもないだろうと俺は2人から少し離れて様子を見守っていた。 「命、あのね、疲れたらねお休みしていいんだよ…?」 「うん」 「あとね、悲しかったりね、寂しいって時もだよ。僕ね、何も出来ないけど命が悲しいとか、寂しいって言ってくれたら、命がもうそうならないように、ずっと一緒にいるよ…?」 「…うん」 「僕、命に嫌々ってされるのは嫌だから、命の嫌なことはしないの。だってね、命は僕の嫌なことしないんだもん」 命の涙を俺達より小さな手で拭ったユキくんはそのまま柔らかく笑ってみせる。 「僕はね、命の隣にずっといるよ」 「ユキ…」 「なあに?」 「…お前は本当、優しいな」 「命も、たくさん、優しいよ」 命の手がユキくんの背中に回ってそのまま抱き寄せた。 涙は止まったようで、俺を振り返り柔らかい笑顔を見せる。 「悪い、もう大丈夫」 「…そうか」 その笑顔ですら仮面だと思ってしまう俺はきっと酷いんだろうけど、だって仕方ない。本当のお前がどこにいるかを俺は知らないんだから。 「トラに連絡しとけよ。それから親父にも」 「うん」 「…さあ、なら、出掛けるぞ。」 命はゆっくり立ち上がり、ユキくんと手を繋いだまま外に出る。 時折不安からか詰めていた気を緩めるかのように息を吐く命を見て、まだ完全に復活した訳では無いことがわかって、やはりまだ命とユキくんだけにしておくのは心配だから、今日も帰らないことを決める。 「あのね、ブランコ、乗りたいの!」 「うん」 「命、ポーンって、押してくれる…?」 「いいよ」 ユキくんの頭わしゃわしゃと撫でた命は、前より少しだけスッキリしたようにも見える。 「今日は命いるから、いつもよりも、もっともっと、楽しいねぇ」 「…そうか」 ユキくんを見つめる命の表情はとても優しかった。

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