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命が怒った

目を覚ますと華さんがすぐ近くにいて驚いた。 起きた俺に優しく笑いかけて「ゆっくり休めた?」と聞いてくれる。 「はい」 「ならよかったわ。あ!そうそう!美味しいお菓子を貰ったの!一緒に食べましょう?」 「え、でも…」 ただの一組員である俺が華さんと二人きりでいるのはあまり良くないし、その上お菓子まで頂くのは…何だか少し、違和感がある。 「何遠慮してるの?これ!美味しそうでしょ?」 「…はい」 流されるまま、お菓子を食べて時計を見ると午後の七時を回っていて眉を寄せる。 そんなに長い間寝ていたのか、とユキを思い出して不安になった。 「あの、俺帰ります…すみませんでした、寝てしまって」 「あら、謝らなくていいわ。家族には甘えなさい。」 家族って、華さんが言ってくれた。 胸が熱くなって、鼻の奥がつんとしたのを堪える。 「私は貴方の母親なんだからね。そうそう、これ、ユキくんに持って帰って。」 華さんがユキにって紙袋を渡してきた。 中には子供の服が入っていて、ユキに似合いそうだ。 「ありがとうございます」 「いいのよ。」 華さんの笑顔は落ち着く。 二人で部屋を出ると親父と早河がそこにいて、俺は思わず頭を下げた。 「ご迷惑をおかけしました」 「迷惑なんて思ってねえよ。それよりもう何ともないか?」 「はい。落ち着きました。」 「そうか。ならいい。帰ってゆっくり休め。早河もな」 早河は立ち上がって俺に行くぞと視線だけで伝えてくる。頷いて親父の部屋を出ると、早河はそのまま俺達の乗ってきた車に乗り、俺の家まで帰った。

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